【砂漠の星に見る夢】
「そうですか。『オシリス』直径の選ばれし者はある歳になると先祖の知恵を自然と受け継ぐと言います。ピラミッド建造の知識以外に受け継いだことはありましたか?」
「残念ながら、それだけです。洗濯を一瞬で終わらせる機械の知識も降って来たら良いと思うのですがね」
そう告げたネフェルに侍女達は「ネフェル様ったら」とクスクス笑ったが、メルサンクは微笑すら浮かべなかった。
「……オシリスが受け継ぐ知識には何か意味があると思われます。
私はそれを解明することこそ、このくだらぬ宗教冷戦を終わらせる近道のような気がしてなりません」
冷静な口調でそう告げたメルサンクに、ネフェルは小さく頷く。
「ええ、そうですね、母上」
「そして一つ忠告させていただきます。『オシリス』の選ばし者として生まれつき知恵を授かることができてもそなたの命までは先祖は守り通すことができません。人の生死は運命と見なされるからです。くれぐれも軽率な行動をとらぬよう、お気をつけください」
強い口調でそう忠告したメルサンクに、ネフェルは胸に手を当て、
「お言葉、胸に刻みつけておきます。それでは失礼致します」
と頭を下げて部屋を出た。
通路を歩いていると肩にとまっていたフェニックスが、クアッ、と鳴き声を上げる。
「そうなんだ、母上は怖いだろ? 昔から教師みたいな人なんだよ」
ネフェルはそう言ってクスクス笑った。