【砂漠の星に見る夢】
「もう、水もない井戸ね」
「そう見えるだろ」
ネフェルはヒョイと身体をひるがえして井戸の中に飛び込む。
「ネフェル!」
井戸の底に飛び降りたのかと青ざめながら声を上げたが、ネフェルは井戸の中心に、宙に浮くようにして立っていた。
「――え?」驚き言葉を失っているイシスに、「さっ、こっちへ」とネフェルは微笑みながら手を差し伸べる、
戸惑いながらも彼の手につかまった、その瞬間、井戸の上から二人の姿が消え、気が付くと不思議な円形の部屋にたどり着いていた。
―――海の底のようだ。
イシスは『その場』を見るなり最初に感じたことはそれだった。
実際、海の底など行ったことがないし、海を見たことは数えるほどしかなかったが海の底はこんな風に青く静寂に違いない。
壁も床も天井もさいの目に区切られた青色で、蛍光色を含む様々な光がまるで呼吸でもしているかのように柔らかく点灯している。
部屋の中心に薄くて大きなモニターがあり、その前にタイルのような光のボタンが並んだデスクと牛革の黒い椅子があった。
「ここは、『オシリス』のエジプト支部なんだ。対外的には『教会』と呼んでいるけどね。とはいえ普段はこうして無人なんだ」