【砂漠の星に見る夢】

「オシリスの教会ってこんな所にあったのね。太陽信仰派が躍起になって探しても見つからないはずよね」


イシスは感心の息をつきながら、ゆっくりと身体を起こす。


「教会なのにオシリス神の像とかはないのね?」


円形の不思議な室内を見回しながらそう漏らしたイシスに、ネフェルは小さく笑った。


「多くの人が勘違いしているようだけど、『オシリス』は宗教とは違うんだ」


「えっ? だってそもそも星を信仰しているから太陽信仰に疎まれているのでしょう?」


「他の星から移り住んだと信じているだけで信仰とも違うんだ。そしてこの宗教紛争も元はといえば『オシリス』の責任なんだよ」


そう告げたネフェルに、どういうこと? とイシスは眉を寄せる。


「……今も昔も星信仰派には学者が多くてね。
仮説で固められた今の世で真実を知る数少ない者の集まりなんだよ。
昔、そんなオシリスの一人が太陽信仰の大神官に向かって、『太陽は絶大な神ではなく、ただの星の一つであり宇宙には太陽のような星はいくつもある』と太陽神『ラー』を真っ向から否定する発言をしたんだ。
その為『オシリス』は神をも罵倒する異宗教の不届き者ということになった。
そしてそんな不届き者を一掃したいところだけど、高名な学者たちだから無下にもできない……という今の状態になったんだ」


ネフェルはそう言ってバツが悪そうに肩をすぼめた。


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