泥だらけの猫
 下半身裸って何よ? 

 イソフルランって聞いたこともない。 

「えっ?」 

 ちょっと待ってよ。死体は下半身裸。私の状態と照らし合わせると・・・・
 これって、私が係わってるってことになるの?   でも、私は刃物なんか持って無い。 

 もしも死体の陰部のDNA検査でもやられたら、私の何かが出てくることも考えられるのだろうか。 
 確か、唾液でも反応が出ると聞いたことがある。それが本当なら私の液体が検査に反応してしまうのではないのか。 
 私はハッとしてバッグの中を床にばらまいた。だが、刃物は何処にもなく、血痕さえ付着していない。私、何処かに捨てたのだろうか。だけど、歩く範囲なんてたかが知れている。もしもその辺りにでも捨てていたら、もうとっくに発見されていても可笑しくはない。それとも、発見されないような場所を探して捨てたのだろうか。そう考えると何が何だか分からなくなってきた。

 だが、きっと奴はまた私のところへ来るだろう。あの目は絶対に私を逃すまいとしている黒い光を放っていた。もしも、殺害された時間の直前に駅辺りのカメラにでも映っていたら最悪だ。それだけで私のアリバイは無くなってしまう。
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