Special

コツッ…

その足音にオレは客の女から視線を外した。

目の前に居たのは、黒い服と白いシャツ、ネクタイを締めた姿の女―――。


真琴…!


手に紙袋を持って、白いビニール袋を提げて切れ長の瞳を少し大きくしてこっちを見ている。

だけど真琴は、すぐにいつもの表情に戻って少し笑みを讃えながら軽く会釈をして角を曲がって行った。


「どうしたの? マサキ…きゃ!」
「―――悪い。外ではもう“営業”してないから」


オレは大事な顧客を払いのけて真琴の後を追った。

カラン! と大きめな音を鳴らしてドアを開けると、今しがた着いたであろう真琴がカウンターに紙袋を置いていた。


「―――いらっしゃい」


静かにそういう真琴はさっきのことなんてこれっぽっちも気にしてない。
いつもと同じだ。

そんな真琴にオレは何を言っていいか、何を言いたいかわかんなくて、そのままその場に立ち尽くしていた。


「…座ったら?」


スッと手のひらをカウンターの椅子に向けてオレを誘導する。
オレは黙ってそれに従う他、なかった。

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