Special

「…うるせ」


起き上がれないまま小さく言った。
真琴は何も言わずにどこかへ消えて行った。

その間オレは目を閉じていた。

ちょっと前までのことを回想しながら―――。


―――トンッ。
頭の上の方で音がした。

薄ら目を開いて重い頭を持ち上げる。

ぼやけた視界に入ってきたのは、ストレートの黒髪を下ろしてこっちを見下ろしてる真琴。


「それ、なに」


オレは真琴とオレの間に置かれていたロックグラスを見て言った。


「サムライロック」
「日本酒か…」


オレがゆっくり手を伸ばしたら、それより先に真琴の手がグラスを持ち上げた。


「コレは私の」
「は…? てめ、何仕事中に…」
「閉めてきたっつーの! 他のスタッフも帰ったし。もうとっくに閉店時間過ぎてる!」


そう言って真琴は長い指で掴んだロックグラスをゆっくりと口に付けて傾けた。



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