Special

「お前…酒、強そうだな…」
「よく言われる」


久しぶりに体を起こして真正面から真琴を見て言った。
珍しく、真琴もオレを真っ直ぐに見つめてきた。細い白い手は自身の黒髪をかき上げる。そしてゆっくりと色のいい唇が動いた。


「マサキはなんで、今の仕事やってんの」


その質問は、ここ数日自問自答し続けたものと同じ。
だからオレは即答出来ずにただ息を止めて真琴を見ていた。
それでも、じっと見つめ、オレの言葉を待つ姿勢の真琴に負けて、オレは苦し紛れに口を開いた。


「……なんだよ急に」
「いや…初めて見たから、さ」
「何を」
「仕事中のマサキ」


ここまで真琴はオレから目を逸らさない。
その珍しく真っ直ぐな視線はオレの動きを止めてしまう。だから、オレも、逸らしたくても真琴から目を逸らせないでいた。


「アンタの営業スマイルって――――…」


どうしてだよ。
なんでこういうときに限ってずっと見てくるんだよ。


「作ってる、とかそういうんじゃなくて、泣きそうな顔…してる」


ずっと悲鳴を上げていた。
それは自分も気づかない深いところで。


「他の女は、よくマサキにあんな顔させたままでいられるな」


真琴は少し、苛立ったような口調と表情でそう言った後、カウンター越しにオレのシャツを掴んでサムライロックの香りを届けてきた。

柔らかい感触と共に――――。


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