戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?―特別編―
――だが、彼女の痛みはこんなものではなかった。知らぬ間に苦しめていたと知って、ただ胸がキリリと痛む。
「まっまー」
その時、彼女の胸の中からママを呼ぶひと声。さらにきゃっきゃっと、はしゃぐ笑い声が室内を優しく包んだ。
怜葉は気が抜けたのか、その場へ座り込んでしまった。
「ひっく、ううっ」
すると星矢は、咽び泣く彼女の膝上で服を掴みながら、悲しそうな顔を浮かべた。
「うぅー……」
息子をそっと抱き上げると、不安そうな顔をして俺を見つめてくる。
「星矢、ごめんな。大丈夫だよ」
それぞれ頬にちゅ、とキスを落としてギュッと抱き締めた。
子供は感受性が高いというのに、板挟みにされて辛かっただろう。
「怜葉さん」
名を呼んで胡座をかいて座り、星矢を横抱きする。しゃくりを上げ、俯いて泣く華奢な姿に問う。
「あの写真の他に、貴方を傷つけたものを教えて下さい」
ピクリ、とその身体が揺れる。――意外にも芯が強い彼女は、意地悪い人々に屈しない。