『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
楢崎くんは、卒業式までの日々もいつもどおり淡々と過ごしていた。
わたしは複雑な思いで、彼を観察していた。
彼の気持ちを考えれば、なんだか少しかわいそうで、だけど、ちょっと嬉しいに似た感情を抱く自分もいて。
わたしってイヤな子。
そんな自分に落胆した。
わたしの気持ちも誕生日もすっ飛ばして、3月1日はやって来た。
卒業式のこの日、在校生は休みだった。
わたしは楢崎くんとあの先輩の2ショットを思い浮かべた。
きれいな先輩が、卒業が寂しくて泣いているのを、彼は静かに慰めている。
彼なら、そっとハンカチを差し出すのかな。
それとも、彼女の頬を伝う涙をそっと親指で拭ってあげるのかな。
彼の静かな優しさを知っているだけに、胸が苦しくなった。