『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
晴天の空の下、わたしは自転車で駅前にあるカラオケボックスに向かった。
卒業式は春を思わせる行事なのに、感じる空気はまだまだ冬だった。
わたしの気持ちとおんなじだ。
そんなことを思って、1人苦笑してしまった。
カラオケボックスに着くと、すでに友だちはみんな集まっていた。
オレンジジュースの入ったグラスで乾杯をすると、みんなが、
「お誕生日おめでとう!!」
と、わたしの17歳を祝ってくれた。
フリータイムいっぱい使って、歌いつくしたわたしの頬は、少し痛くなっていた。
おいしい物を食べて、みんなで騒いで、いっぱい笑って。
今朝、自分が悩んでいたことさえ忘れていた。
夕方、みんなと別れる頃には、すっきりとした気持ちだった。