逢いたくて
「私はただただ焦ったわ。彼が私のもとからいなくなると…。そして最低なことをした」

少しの沈黙

「血液型の同じ彼の部下と契約したの。私の妊娠を条件にして、叶えば彼に会社を渡すと…。そうなったら譲には別の会社を任せればいいと安易に考えてた…」

「……」

「私はすぐ妊娠。これであなたに勝てると思った…。あなたは子供を諦めたと知っていたから。」

渉は私の手を握る力を強めた

「幸せだった…。譲は毎晩私のお腹に触れて語りかけるの。赤ちゃんに。いつも背中を向けて寝ていたのに絶対に背を向けなくなった。譲は私を愛そうと一生懸命だった…。私がずっと求めていた本当の幸せがやっと手に入ったと思った…」

奥さんの瞳から大粒の涙が伝った

「でも所詮にせものにすぎなかった。当たり前よね…嘘で固めた愛はもろかった…。」

「……」

「会社をのっとられ譲にもすべてが知れ渡った。なのにね…。すぐ出ていくと思ったのに…譲は…かわらず私のお腹に語りかけつづけた…」

「……」

私も涙が流れる…

「私がなんで出て行かないのか聞いたら彼何て言ったと思う?…君が泣くから…ここにいるって…。君が泣くとお腹の赤ちゃんも泣いちゃうからって…。見るからに苦しそうな顔で…。辛そうな瞳で…」
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