愛さない。愛せない。



自然と涙は出なかった。
勿論、笑みも出なかった。


ただ、ただ、
頭が痛くて、心臓がえぐりとられそうだった。




「また来たのな、お前」


お兄ちゃんのお墓につき、隣の隣にいる翼さんに言われた。

おじさんも毎日いるじゃん。
そう言いたいけど、無神経かなと思ってやめた。



「翼さん、毎日会うね」

この人は喋れる人だと思う。心優しい、暖かい感じが好きだ。



「お兄さん、俺と同い年…だっけ?」


「うん。26歳で止まってるけど」


翼さんと会ったのは、お兄ちゃんのお墓が作られた次の日だった。お兄ちゃんのお墓の隣の隣が翼さんの大切な人がいる。



白い百合の花束が添えられていて、翼さんは静かに話しかけていた。


「好きだよ」
「愛してる」と。




翼さんはお兄ちゃんと同い年で、私が翼さんの年齢を知った直後におじさんって呼ぶと、怒られた。


でも、20代後半の人は私にとっておじさんだから、仕方がないと思ったけど、可哀想だから翼さんと呼ぶことに決定したのだ。



まぁ出会った当初は、高校生だと思ったんだけどね。本当は20代後半だったらしいけど。


それぐらい若々しい容姿で、綺麗な顔なのだ。



そんなこんなで、翼さんとは、出会ってもう1年たつ。


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