彼氏くんと彼女さんの事情


駄目だ。これじゃあ、春川くんを振り向かせる努力をすることもできない。



うーん、と暫(シバ)し考えて、私は少し質問を変えた。




「じゃあ、髪型はどんなのがすき?……私、髪切ろうか迷ってるんだけど、どう思う?」



最近髪が胸の辺りまで伸びてきたので、切ろうどうかか迷っていた。


因(チナ)みに伸ばし始めたのは数ヶ月前で、いつも半年に一回、肩の下辺りまで切る。




「……切った方が、良いんじゃない」

「!」



ぽそりと呟かれた言葉に、わたしの胸は高鳴った。



やっと春川くんの好み(?)がひとつ分かった喜びで、足取りが軽くなる。




「切ります!切りますとも!」

「んー」



隣で眠そうに欠伸をする春川くんに向かって声を張り上げる。あまり興味無さそうだけれど、それでも私の胸は幸せでいっぱいだ。




好みが一つわかっただけで幸せを感じる私は、寂しい人間なのだろうか……という疑問が一瞬頭を掠めたが。

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