彼氏くんと彼女さんの事情
駅の前の交差点に差し掛かり、信号を渡ろうとすると。
反対方向の道を指差して、春川くんが言った。
「俺、家あっちだから」
「え、あっそうなの?」
「うん。じゃ」
「え」
淡々と言い、一瞬手のひらをこちらに向けるとすたすたと歩いていった。
「あっ…春川くん……!バイバイ!」
と、春川くんに向かって声を張り上げたときには既に、春川くんの姿は見えなくなっていた。
「(行っちゃった…)」
本当に、突然。
いや、家まで送ってくれるかもとか、別れ際に何かあるかもとか、期待してた訳じゃない、けど。
期待してた訳じゃないけれど、やっぱり寂しかった。
「(ま、明日も会えるか)」
諦め、くるりと角度を変え歩き出そうとしたら。
「?」
ここから数十メートル程の距離の、駅の前の階段に座っている女の子たちがこちらを見ていたことに気がついた。
視線が交わると、すぐに目を逸らされた。
「(あれ?あの人たち…)」
見覚えがあるような気がして、目を細めてじっと見てみると。
あ。
「(クラスメートの高倉さん達だ……)」