彼氏くんと彼女さんの事情
反射的に目を瞑った。
「あっ」
驚きと戸惑いを含んだ高倉さんの小さな声が耳にはいる。
数秒経っても覚悟していた冷たい感覚は無かった。
「……?」
恐る恐るかたく瞑っていた目を開けると、視界は一面、白。私はすぐにそれが春川くんの背中だということを理解した。
「春川くんっ!?」
身をよじって机と春川くんに挟まれた隙間から抜け出す。開けた視界に、サッと血の気の引いた顔の高倉さん達が映った。
「ご、ごめんね春川くん……」
「………」
春川くんは頭から水を被っていて、カッターシャツは濡れて肩の辺りは透けていた。
ポタポタと水を滴らせる前髪の合間から覗く瞳は、怒りの色を含んでいるように見えた。
「……あの、」
「何してんだよ」
高倉さんに向ける、普段とは違う問い詰めるような刺々とした口調にビクリとした。
やっぱり春川くん怒ってる……。
春川くんが怒るところなんて初めて見た。
恐い、と思ってしまった。
「ご、ごめんなさい……」
「………」