ピアス
 クリフは思考を中断せざる負えなかった。


 柚菜が、「戦争?」と言った不安そうな声で訊いたからだ。



「それと似たようなことなのかもしれない」クリフは言い、「この国でも戦争が?」と訊いた。




「ついこの間まで戦争を。多くの犠牲者がでたわ。戻る者と戻らない者がいた」
 沈痛な面持ちで柚菜は言った。時折、声を震わせ、目には涙が滲んでいた。


 家族は?とクリフは聞こうとしたが、胸にしまった。

 おそらく全員死んだのだろう。それが争いの顛末だ。


 残された者は哀しみと思い出を背負い、生きていかなければならない。


 誰が悪く、誰が悪くないか、なんていうのは一度戦争という火蓋が切られてしまえば、どうでもうよくなる。



 なぜならそこには生きる、か、死ぬか。の選択肢しかないのだから。



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