ピアス
訪問者
 海に流れ着いて一ヶ月が経過した。




 傷も癒え、体力も回復した。普段通りの日常生活を送れるようになった。それはクリフの旅立ちを意味することでもある。なぜか、ここではないどこかへ自分の居場所がある気がするからだ。


 が、柚菜と過ごす内に、彼女に対する〝情〟というもの湧いてきた。それは深海から突如浮上してきた深海魚のものだ。


 こんな名も知れず、記憶を失っている者にやさしく接すしてくれる彼女に対して何か役に立ちたいと思うのは当然のはずだ。


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