ピアス
 それからさらに一ヶ月が過ぎた。




 秋風が窓から侵入し、家の中をやさしく彷徨った。



 いつものように二人で朝食を食べた。


 おにぎり、たくあん、という質素なものであったが、おにぎりは塩がほどよく効き、握りひめた米に真心を感じた。



「すみません」
 戸口からしゃがれた声が聞こえた。

「はい。今行きます」
 柚菜が立ち上がり、戸口に向かう。


 こんな朝早く誰だろう、とクリフは思った。
 それに聞覚えのある声だった。


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