アルフォドル
クローバー


「はあっ! はあっ! おっと!」

 少年は狭い路地裏を、ゴミ袋やらバケツをかきわけ、蹴り飛ばしながら走っていた。


 まるで自分の恐怖するものから逃げているように。


 チラチラと振り向きながら走っていると、ふと前を見た瞬間に魚の網のようなものが目に入った。


「くそっ!」


 右足に重心をかけて左の壁に飛び、また左足に重心をかけて右の壁へと飛び移る。

 網を飛び越えた後、かなり高さのある場所から下へと飛び下りた。

 もうすぐ街路地に出ようとした瞬間、武装した男達が数名銃を構えて現れた。

 八方塞がりの狭い路地。

 少年が逃げる場所すらなかった。


 ヴォン!!


「何だ!?」

「ぐああっ!!」


 男達が群がっているせいで、少年からはいったい何が起こっているのかが見えないでいた。


 解っているのは、バイクのエンジン音と、そのバイクのタイヤの摩擦であろうその音が聞こえてくるだけ。

 少年の目の前まで来ていた男は銃を乱射したが、バイクに乗っていた人は軽々と避け、目にもとまらぬ早さで男の側まで走り、殴りつけた。

 
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