アルフォドル
「動物の優れたDNAを採取し、それを人間の受精卵に注入して育てることこそ、人間社会のタブーだったのよ」
「僕達はね、表社会では法に反する仕事をさせられていたんだよ。君が今任務についているのがいい例だよ」
バルドルが優しく言うと、テュールは黙り込んだ。
テュールの任務は、組織データを悪用している幹部の男の始末。
いわば暗殺だ。
どんな過酷な任務も、そんじゅそこらには負けないほどの忍耐力を兼ね備えた戦士達。
果たせなかった者はカードナンバーを剥奪される。
剥奪された者は、再教育という名の面目で今も戻ってはきていない。
「産まれてくることが罪。殺すことが罪。僕達は存在しちゃいけないってことなんですか?!」
「いいえ。造られた者でも、あたし達は生きる権利がある。人間達に、責任をとってもらうわ」
力強く言うと、柱の影や2階から何百という数のカードナンバーやノーナンバーが現れた。
その中には、人の形すらしていない奇妙な形の者もいる。
「こっ! こんなにいたなんて!?」