愛恋歌-tinkle tone-
ひっくり返したカップから勢いよくこぼれ落ちた。
シンクに流れていく黒い液体を見て、私の心も流れてしまえばいいのに…
そんなことを思った。
私の真っ黒な心もこの体も一緒に…
「ごめんね、せっかく入れてくれたのに…」
申し訳なさそうに目を伏せる彼とは逆に私の心はすっきりとしていた。
「気にしないでよ。私もコーヒーは好きじゃないの」
「……」
じゃあどうして…
そう聞かれるかと思ったけど、彼はその理由をすぐに悟ったのか何も言わなかった。
「そっか、一緒だね」
代わりに優しく微笑んでみせて…ドキッと私の心を刺激した。
ずるいよ…
いつもそうやって気付かないうちにあなたは私の心を少しずつ動かしてたんだから。
このときはそんなこと気付くはずもなかったけど…