理想恋愛屋
「ご、ごめんなさい!なんでもするから……っ!!」

 フォローの言葉すらみつからず、ぽろりと零れてしまった言葉。


 しかし、思いのほかピタリと泣き声が止まった。



「……本当?」

 そういって振り向いてきた彼女の瞳には、雫一つ見当たらない。


 オレは本当にこういうのに弱いらしい。

以前、例の姫君にもやられたことがあるというのに、なんとも学習能力がないオトコだ。


かといってここまできた以上、オレも引き下がれない。

「も、もも、勿論だよ…」


 …―ああ、神様。

もしいらっしゃるならば、どうかオレにご加護がありますように……。



 そんなオレの祈りが通じたのか、彼女はオレの首に腕をまわして飛びついてきた。


「え!?あの……っ!?」


 戸惑っているのも関係なしに、ニッコリ微笑んだ彼女。


「アタシは秋。ヨロシクね、葵社長♪」


 嬉しそうに彼女…秋さんは、冷や汗が流れるオレの頬に唇を押し付けてきた。







 ……すでに、波乱の予感。




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