似非恋愛 +えせらぶ+

「無理強いする気も深追いする気もないよ。でも、篠塚さんが俺のこと見てくれたらいいなって思うんだ」

 サングリアを口に運んだ瞬間に言われて、心臓が一気に跳ねた。

 こんな、ときめきみたいなもの……長らく忘れていた。

「やっぱり、篠塚さん可愛い」
「か、からかわないでよ」

 可愛いと言われて照れるような年齢じゃない。
 可愛いと言ってもらえるような女じゃない。

 それでも、嬉しかった。

 長らく忘れていた高揚する気持ち。
 心臓が暴れて、温かい気持ちを全身に送り込むような温かい気持ち。

 この気持ちには、どういう名前がついていただろうか。

「からかってないよ。篠塚さん、本当に綺麗だから、さっきから他の男の人も篠塚さんのこと見てるよ」
「そんなわけじゃいじゃない」
「えー、本当なのに」

 小城君の軽口に、私は笑ってしまう。

「ほんと、調子いいんだから」
「信じてくれないのは悲しいなぁ」

 私達はそうして笑いながら、楽しい時間を過ごした。




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