似非恋愛 +えせらぶ+
「ちょっと! 訊いておいて、その反応はなんですか?」
「あ、いや、よもやそんなことで悩んでいるとは思っていなくてな。仕事で失敗でもしたのかと」
木戸さんは、ちょっと抜けていたらしい。
「いやいや、悪い。でも、わからないって、おい、男ほど単純な生き物はいないだろうに」
「私にとっては複雑怪奇ですよ。言葉にしてくれなきゃ何も伝わりません」
口にしてやっと気づいた。斗真は肝心なことは何も言わないのだ。だから余計に私が混乱する。
木戸さんは深いため息をついた。
「あのな、男なんて生き物は至極単純明快で、好きな子には格好よく見られたいもんだ。ただそれだけだよ」
「……木戸さんには、幼馴染みの女性っていますか?」
私の質問に、木戸さんは意外そうな顔をした。
「ん? ああ、いるよ」
「その人って、木戸さんにとってはどんな人ですか?」
「まあ、小さい頃からお互いよく知ってるし……兄妹みたいなもんかな?」
やっぱり、そうだよね。
「その彼女と、恋愛関係になったりはしなかったんですか?」
木戸さんは笑って手を振った。
「ないない」
「なんで?」
「なんでって言われてもな……思いもつかないわ。この年にもなると、小さい頃からの友人ってのは貴重だし、その関係を大事にしたいもんだ」
木戸さんの言葉に、私も頷いた。