似非恋愛 +えせらぶ+

「めちゃくちゃにして」

 全部忘れるくらい。
 何もかも、嫌になるくらい。

 壊してほしかった。

「うんと優しくしてやるよ」

 蕩けるようなキスの後、俺だけ見てろ、と耳元で聞こえたのは、幻聴だったのかもしれない。
 斗真が涙をぬぐいながら、私の肌に唇を寄せる。斗真の身体が燃えているみたいに熱くなっていく。そしてそれは、私も同じ。

 斗真の背中に腕を回して、離れないで、と懇願する。

 ソファの軋む音と、斗真の荒い吐息、私の甘い声が部屋に響く。

 かつて、真治と一緒に暮らした部屋で。
 かつて、真治に抱かれたベッドで。
 あの日、真治が他の女を抱いた部屋で。

 私はかつて好きだった男に、抱かれた。
















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