似非恋愛 +えせらぶ+

「お前が望むなら、な」

 そして、斗真もずるかった。

 部屋に入って鍵をかける。そのまま私はバッグを投げ捨て、斗真の頬を掴んだ。そして引き寄せるようにキスをする。
 斗真が私の腰と後頭部に手を回して、キスに応える。

「ん……」

 蕩けてしまいそうな、キスだった。
 甘くて、頭が真っ白になるような、麻薬みたいなキス。

 私達は、絡まり合うように靴を脱いで、キスをしながら部屋の中に移動する。その数十歩の間に、斗真の呼吸が荒いものになっていく。

「……今更やめらんねーからな」

 ソファにたどり着いて、そこに私を押し倒した斗真が言った。その顔は男のものになっていて、蒼い瞳が妖しく私を捉える。

「やめないで」

 私の眼尻からこぼれる涙。泣くつもりなんかなかったのに、自分が、あまりにもみじめすぎて涙が出てきた。

 裏切られたのに、未だに真治のことが好きな自分がみじめだ。
 こうやって、昔好きだった男を利用している自分がみじめだ。
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