大人的恋愛事情 SS
 
適当に挨拶して、店の出入り口まで行くと、コートを手に持つ繭が立っていた。


飲みに行く気はあるらしい……。


「マズイか?」


「いいんじゃない」


軽く首を傾げながら、店を出てコートを着る。


近い距離でフワッと香る柔らかい女独特の匂いは、そんな適当な返事と合っていない気がした。


女っぽいだとか可愛げだとか、色気を出してこない繭。


噂や見た目通りと言えばそれまでだけど、正直今まで女にこれほど軽くあしらわれるような扱いを受けた事がない俺にとって、ある意味新鮮だと思えたりもして。


媚びるだとか、可愛く見せるだとか、そんな空気はまったく見られない。


それはよほど俺に興味がないのか、元々の性格なのか……。


「どこ行く?」


「どこでも」


「俺のこと知ってる?」


「知ってますよ、藤井さんでしょ」


投げやりな会話に思わず苦笑いすると、隣を歩く繭がチラッと俺を見る。
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