大人的恋愛事情 SS
 
ケーキに灯された蝋燭の淡いオレンジの灯りが、電気を消したリビングに揺れる。


「おめでとう」


隣に座る男がそう言ってくれて、それを吹き消すと一転して薄暗い闇になるリビング。


それでも隣に藤井祥悟がいてくれると思えば、寂しくもないし怖くもない。


きっと家族になるというのは、こういうことなのかもしれない。


いつだって、必ずそこにいてくれる。


どれだけ仕事ですれ違っても、どれだけ時間的に余裕がなくても、それでもその存在がそばにあるという揺るぎない契約。


それが結婚なのかもしれない。


薄暗いリビングの中、一度消えた灯りがまた揺れる。


ケーキから外した蝋燭を、空いた皿に立て始める藤井祥悟。


「電気点けんの面倒だし」


そんなことを言いながら笑うので、私はケーキを切り分け皿に載せる。


冷蔵庫に用意されていた、シャンパンは妹からのプレゼントらしい。
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