大人的恋愛事情 SS
 
グラスの中の透明なはずの液体はオレンジに染まり、細かい気泡がパチパチと弾ける。


テーブルに並んで座り、それを軽く合わせると小さなガラスの音がして、さらに気泡が弾けた。


「記念すべき、一回目だな」


「え?」


「これから何回こうやって、繭の誕生日祝う事になるんだろうな」


グラスをテーブルに置き、そんな嬉しい事を軽く言う藤井祥悟。


シャンパンの冷たさが喉を通り、蝋燭の火が灯るこのリビングの小さな空間には、今の私の最高の幸せが充満する。


甘さ控えめの、フルーツケーキは本当に美味しくて思わず隣を見ると、私に幸せをくれる男が苺を口に入れていた。


揺れる灯りが、藤井祥悟のスッキリとした顔に、陰影を作りだしいつもよりも色っぽく見えて思わず見惚れる。


「見るなよ」


「どうして?」


「恥ずかしいだろ」
< 48 / 77 >

この作品をシェア

pagetop