大人的恋愛事情 SS
 
まったく恥ずかしそうでもない男が、グラスを持ちそれを飲みながらこちらを見る。


そして手を伸ばし、私の唇に軽く触れた。


「クリーム付いてる」


微かに笑ってそう言いながら、拭った指を自分の口に持って行きそれを舐める。


本人はきっと何気なくしただろう仕草なのに、やけに色気ある今日の藤井祥悟に、少々酔っている私が欲情しないわけなく。


薄い唇にクリームの付く指先が、触れているのを見ながら、その指先になりたいなどと、わけのわからない事を思いだしたりして……。


その唇に視線が釘付けになる私を見て、呆れたように微かに笑う。


「誘ってんのか?」


そう言われて慌てて視線を外した。


自分の中の欲情を見透かされて、突然恥ずかしく思えて……。


「繭?」


「別にそんなんじゃない」


「そうか?」


「そうよ」


「だったらその潤んだ目で見ないでくれ」


潤んだ目?
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