大人的恋愛事情 SS
そう思い振り返ると、家にいると思っていた男がいつものスーツ姿で立っていた。
コートもマフラーもなくなった藤井祥悟は、ダークグレーのスーツに、春らしく薄いピンクのパステルカラーシャツを合わせ、それを黒とグレーのストライプ柄のネクタイで纏めている。
朝も見たはずの姿なのに……。
どう考えても可愛いだけのピンクのパステルカラーなのに、大人の色気が滲みでてるのはどうしてなわけ?
いやいや、そこじゃないから。
「どうしたの? こんな時間なのに……」
そう思って腕時計を見ると、時間は10時を回っていて……。
どう見ても今帰りのような藤井祥悟に首を傾げていると、隣に立つ森君が少し屈んで私の耳元で面白そうに呟いた。
「俺、帰ります。なんでか睨まれてますからね」
睨まれてる?
森君の言う意味がわからないでいるというのに、当の本人は藤井祥悟に頭を下げて歩き出す。