If.~魂の拠所~
第一章.廃村の娘
小さな村だった。
一軒焼け焦げてはいるが、その他の家屋は無事で、それでも生物はひとつも確認出来ない。
三人で手分けしてこれなのだ、生存者が居る確率は皆無と言ってもいいだろう。
諦めを含んだ溜め息を吐き出していると、かなり遠くの方から呼ばれた。
「ジュード!」
ジュードと呼ばれた青年は、黒髪を揺らして即座に反応した。
五百メートルは離れた先に仲間である青年の茶髪がゆらめいている。
何故か重たい体を半ば引きずるようにしながら、ジュードは男に駆け寄った。
「どうした、サンドラ」
サンドラと呼ばれた茶髪の青年が、いつにもまして真剣な表情をしていた。
芳しくない、分かってはいるのだが。
出来れば認めたくない、出来れば、何も見たくはない。
それでも知る義務がある。
「まだリーチェを呼んでないけど」
「構わん、どうせ呼んでもすぐには来ないだろ」
苦笑混じりに伝えれば、「確かに」とサンドラも同様に口角を上げて肩を竦めた。
もうひとりの仲間であり、唯一の女性であるリーチェが呼んですぐに来た試しが無い。
彼女は生粋の自然好きだから、おそらくふらふらと村の中を探索しているのだろうが。
何処かマイペースなリーチェに救われた事も、少なくない。
「で、どうした」
「あれ」
思い出したように話題を戻すと、サンドラが斜め右前を顎で示した。
ああ、出来れば見たくなかった。
そこには村の中でひとつだけ焼け焦げた家屋があって。
家の中までは見て回らなかったから分からなかった。