焼け木杭に火はつくか?
「お言葉を返すようですがね、その対戦相手はあなたの会社の社員ですからね」

へへんと胸を張りそう言い捨てる良太郎に、夏海はこれでもかと言うくらい、盛大に息を吐き出した。
いつまで経っても子どものような二人に、呆れを通り越し、すでに情けないの領域に感情の針は振れていた。
そんな夏海を横目で見ながら、でも、以外だなあと良太郎は聞こえよがしにそう呟いた。

「何がよ」
「夏海さん、英吾には元カレの話しとかするんだなあって」
「するわけないでしょ」

何バカなこと言ってるのよと、夏海は良太郎に噛みついた。

「だって、英吾、知ってたじゃないですか」
「そう。それよ。それが謎なのよ。なんで、あの子が長谷と私のことを知ってるの?」

一体、誰が話したのかしら。
首を傾げて訝しいがる夏海に、会社の人じゃないんですかと、良太郎はあっさりとした口調で答えた。
夏海ではないと言うのなら、考えられる答えはそれしかないでしょうと決めつける良太郎に、夏はそれもないと言い放った。
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