焼け木杭に火はつくか?
「ん。判った」

夏海の勧めに素直にそう頷いて、目の前に差し出された菓子類をむしゃりむしゃりと食べ始めた英吾に、良太郎は様子を窺いながらおずおずと話しかけた。

「でさ。英吾。さっきの質問なんだけどさ」
「秋ちゃんが、誰から聞いたのかってやつ?」

そう、それと頷く良太郎に、英吾はまた眉間に皺を寄せて、むぅっと唸るように考え込むような顔をしながら答えを告げた。

「聞いたって訳じゃないよ。知っちゃったって感じ」
「なんだ、そりゃ?」

英吾の答えに、今度は良太郎が眉を寄せる。そんな良太郎など気にする様子もなく、英吾は菓子を頬張りながら、自分のペースで、まるで世間話をしているかのようなのんびりとした口調で話を続けていく。

「秋ちゃん、高校生の頃、駅前のカルチャースクール通ってたじゃん。ケーキ教室」
「そだっけ?」

はて、そんなことあったっけかなというように首を傾げる良太郎に、聡は忍び笑いをこぼしながら助け船を出した。
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