焼け木杭に火はつくか?
「そりゃ、オイラが混ぜっ返したから」

自分が諸悪の根源だと清々しいまでに宣言する聡に、夏海はやれやれというため息を吐き、良太郎はあははと乾いた笑い声をあげ、英吾はなるほどと妙に感心した声をあげた。

「で。ケーキ教室がどうしたの?」
「ケーキ教室? ああ、そうか。ケーキ教室のとこまで話してたんだっけ」

夏海の話の続きを促され、英吾は食べる手を止めて、秋穂の話を再開した。

「そこの教室って他にもいろいろやってて、クリスマスの頃に、パンの体験コースでパン作ったんだ、秋ちゃん。夏海さんにプレゼントしようと思ったんだって。でね、体験コースに集まった人の中に、男の人が一人いたんだって」
「なんか、オチが見えてきたぞ」

かすかに笑いが混じった良太郎のその呟きは聞き流し、英吾は話を続けた。

「その男の人、先生にこの体験教室のことをどこで知ったのかって聞かれたら、彼女の実家にチラシが置いてあって、それを見たって答えたんだって」

良太郎の期待に応えるような内容だった。
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