焼け木杭に火はつくか?
聡の話によると、アルバイト先にと選んだ店は全て、いずれ自分でも店を持ちたいと考えている若者を育てることにも積極的で力をいれているような、そんなオーナーがいる店を選んでいたらしい。
だからこそ、面接のときには正直にそれを打ち明けて、調理場の仕事はもとより、接客やカフェの経営についても、いろいろと叩き込んでもらっていたのだと言う。


-仕入先やらなんやらも、いろいろ教えてもらったよ。
-この厨房も、いろいろアドバイスしてもらったし。
-いいオーナーに出会えたことが最大の収穫だったな。


聡の淡々とした声で続く言葉を聞きながら、高校生のころから既に、聡は自分の将来を決めていたことを良太郎は知り、内心ではひどく驚いた。
カフェをやる。
それは、一体いつから聡の夢だったのだろうかと、良太郎は高校時代の聡を思い返したが、さっぱり判らなかった。
聡の記憶のなかの高校生の聡は、子どものころと変わらず、眠そうでぼんやりとしている。
そんな聡だった。
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