君の声が響き渡る中で
素直で単純ガールは、シャーペンを回しながら「隼人がいるからね」と優しい目をして言う。
「本当に書いたわけ~?(笑)それのが夢なくない?」
なつはシャーペンを持ち直し、また何かを書き出した。
「女の子の夢だよ、恋も夢の一つだよ」
そう言う彼女は本当に恋する女の子ぽかった。と、ふと手首にノートの角が当たった。手元を見ると、偽解答欄に相合い傘。右には、ほのか。左には、和と書かれていた。
「なっ…消してよ!和にこのノート貸すんだから!」
頬が熱い。熱い。恥ずかしくなり、修正ペンを取り出そうとペンケースをあさる手。なつが私の手首を掴み、とめた。
「好きなんでしょ」
疑問詞も付けずに確定して言った彼女に私は、慌てて彼女の口の前で人差し指を当てた。
「違うから!」
和のことを知っているのは、なつだけ。私の気持ちを悟っているのは、なつだけ。
「今!…単純に考えてみなよ」
単純ガール
口答えしない彼女が本当の憧れだった。
「単純だよ…?」
私は、ため息混じりでノートを閉じた。
あ…また、
また違うことを口が喋った。
もう恋はしない、あの人から音楽から離れてから変わっていない考え。
高校二年生。
和と出会ってから、半年が経っていた。