君の声が響き渡る中で

「おまえ、書いてないだろ」

呆れたと、目線を反らし私の机に乱暴に置いた。私はその紙を見下ろす。

「今は…これ…、」

白紙に濃いマジックで“なし”と書き込んで、奴にまた突き出した。

「たくっ…あとで職員室に来い!」

乱暴に受け取ると、出席簿に挟み教室からいなくなった。静まり返っていた教室は、芸能人…いやジャニーズかどっかのアイドルが来たかのように五月蝿くなった。

「なんか…ハートが付く悲鳴が飛び交ってないか~」

周りの女子達が、ドアに向かってハートビームを飛ばしている。

「遠藤くんら学園のジャニだもんな~」

教室の隅で私となつは思いっきり干物女ビーム。なつは隣の奴の席の椅子に堂々と座っている。

「まったく、まったく…顔がいいもんね、職にも困んないだろ」

机に膝を付き、ムスっと女の群がりを見る。

「……正反対」

なつは、私の顔を呆れた顔で見上げる。

「なによ」
「ほのかが干物女で、奴らは完璧女」

机の上に置いてあるルーズリーフになつが文字を書いていく。彼女の頭で何を書いてあるかが見えない。

「奴ら男だけど」

ピンクな悲鳴は、遠くなってきた。

「違う違う、例えだよ。ん~…なんつーの?夢がない女…」

彼女の肘の下には、進路調査用紙が出来ていた。長方形の解答欄はへにょへにょ、文字は丸文字。

「…なつは何て書いたわけ」

彼女は、にやっと笑うと幸せそうに簡単に言った。

「お嫁さん」



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