紺碧の海 金色の砂漠
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『シド! ラシード、私にはお前の話がさっぱりわからぬ。もう一度、最初から説明いたせ!』


ほんのひと月前、新国王誕生で賑わった荘厳かつ壮麗な白亜の王宮。

そこに、ミシュアルの怒号が鳴り響いた。


緊急とはいえ国王の帰国である。ドーム屋根の大広間には赤い絨毯が敷かれ、通路の左右に大臣がひれ伏していた。

ミシュアルは彼らの間を大股で通り抜け、玉座に座る。

そして、呼び出したラシードの報告を受けていたのだが……。


『ですから……報告書どおりです。反日組織を殲滅し、暴動の主犯と目された男を逮捕いたしました。僕は陛下の命令に従い、父上に指示を仰いで、リドワーン王子と協力しただけです』


ラシードはひざをつき、顔を上げないまま答える。


『その“主犯と目された男”が、なにゆえ私の側近ターヒル・ビン・サルマーンになるのか、と尋ねている。答えよ』

『それは……先ほども申しましたとおり、父上の署名が施された命令書に従っただけです』

『確かに、父上にはお前をはじめ若い王族が暴走せぬように、監督をお願いした。だが、父上がご自分で反日組織の捜査をされているなどと聞いてはおらぬ。ましてや私の側近に逮捕状とは何ごとか!?』

『そ、それは……』
 

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