紺碧の海 金色の砂漠

(14)異国から来たナイト

(14)異国から来たナイト



舞はギュッと目を閉じ、覚悟を決め……たりするわけがない。

光ったのが刃物なら、ここで諦めたら間違いなく殺される。得意な蹴り技を披露したいが、横から押さえられていては足が届かない。舞の手元にあるのは羽根枕くらいで……。

舞は枕を手でつかみ、思い切り振り回した。


次の瞬間、枕が切り裂かれ、寝室に最高級のグレーダックダウンの羽根が舞った。


(も、もったいなかったかも……)


なんて思ったが、命には代えられない。

舞は飛び起きて入り口のドアに向かう。だがそこには、鍵がかかっていたのだ。


仮にも国賓室のドアである。日本の家にありがちな、ボタンを押したり、カチリと捻ったりする簡単なタイプの鍵じゃない。

どっしりしたドアに丈夫そうな真鍮製のドアノブ。ノブの下に鍵穴がひとつ。特殊な鍵を使って、中からのみ施錠できると聞いていたが。


(あ、あれ、鍵かけて寝たっけ? いや、そもそも鍵ってドコにあるのっ!? 第一、表に警備兵が立ってるから、逆に鍵はかけないほうがいいって言ってたんじゃ……)


「なっ、なんで開かないのよーっ!」


後ろに人の気配を感じ、舞は振り向いた。

暗闇の中、侵入者が舞に向かって突進してくる。

その手には、間違いなく刃物が握られていた。


「たっ、助けてーっ! ドロボー! ヘンタイ! 変質者よーーっ! 誰か来てーっ!!」


舞は声を限りに叫んだ。

ところが、外から警備兵の駆けつける様子がまったくない。


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