紺碧の海 金色の砂漠
舞は天井の豪華なシャンデリアを見上げ、目をこすった。


「アルの馬鹿……。早く迎えに来ないと、日本に帰っちゃうからね」


小さな声でポツリとつぶやき……やがて、浅い眠りに吸い込まれていった。



……カタン……コトッ……カチャ……


最初は夢かと思った。

でも、舞の眠りを妨げるような音が先ほどから聞こえてくる。舞は夢見心地のまま、近づいてくる足音に薄く目を開けた。

天蓋から吊るされたカーテンの向こうに、黒い影がボンヤリと浮かぶ。


「……アル……?」


舞は半分眠ったまま声にした。

直後、ふわりとカーテンが揺れ……月光を背に黒い影が目に映る。その影は舞に向かってゆっくりと手が差し伸べ……。


(ヘンな夢だなぁ……どうせなら、アルの夢が見たいのに)
 

舞はボケた頭でそんなことを考えていた。


刹那――伸ばされた手が舞の口を押さえたのだ。

急に息苦しくなり、


(こ、これって、ひょっとして、夢じゃないんじゃ……)


闖入者が手を振り上げたように見え、その先が月光にキラリと反射して――


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