紺碧の海 金色の砂漠
舞がシャワーを使わせてもらいリビングに出ると、ティナはすでに着替えていた。違う部屋のシャワーを使ったという。彼女はオフホワイトのワンピース姿だった。マキシ丈だがノースリーブの肩はむき出しになっており、舞より露出度は高い。 

キッチンに立っている彼女の姿は“王妃様”というより、ごく普通の若奥様みたいだ。


「待っててね。あ、紅茶でよかったかしら?」

「あ、はい。何でも……。あの、随分手慣れてるんですね」


意外だった。彼女は大富豪のお嬢様で、お皿の一枚も洗ったことがないようなイメージだ。


「このコテージでは何でも自分でするのよ。空からの侵入さえ阻めば自然の要塞だからって、護衛なしでも許されてるの。レイとふたりきりで……」


そこまで言い掛け、ティナは口をキュッと閉じた。


「あ、あのっ! ひょっとしたら、何かの間違いかも知れませんよ。だって、レイ陛下はティナのことを本当に優しい眼差しで見てるし」


スコールで程よく頭も冷え、舞は前向きに考えようとするが、


「愛していたら、二ヶ月も触れないなんて有り得ないわ……マイはそう思わない?」


ティナも同じくらい冷静になったのか、静かな笑みを湛えながら、温めたティーカップに紅茶を注いだ。

ふたりはそのままソファに移動し、向かい合って座った。


さっきは急いで駆け込んだので気付かなかったが、世界で一、二位を争うほど豊かな国王が所有するにしては……質素なコテージだ。


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