紺碧の海 金色の砂漠
舞がそれとなく尋ねると、


「ここはレイのおばあ様が持っていたコテージなの。この島の出身で……戦時中に、国王の弟であったおじい様と愛し合って結婚なさったんですって。日本人の血を引いていて、身分も低くて……反対されながらも、ふたりは思いを貫き通したの。でも、ご長男がたった六歳で……米軍の爆撃で亡くなって、日本の血を引くご自分のせいだって悲しまれたそうよ」


その為、次男を終戦処理が終わるまで、なんと十四年間も日本の親戚に預けたらしい。彼は十八歳になってアズウォルドに戻り、皇太子となった。それがレイ国王の父親である。

彼は祖国より日本を愛したという。身の安全に配慮して決められたアメリカ人婚約者から逃げまくり、幼馴染の女性と結婚した。

それが、あのティナに嫌味を言っていたレディ・チカコというから……。


(なんかいまいち、素直に感動できないっていうか)


舞がボソッと口にすると、ティナも苦笑する。


「彼女が以前言っていたわ。自分たちは無理に離婚させられた、犠牲者だ、と。――確かに、そうならなければ、彼女はこの国の王妃だったわけだし、レイはこの世にいなかったんだものね。アーロン王子も、生まれていなかったかも知れない」


紅茶を少しずつ口に運びながら、彼女は寂しげに話す。


「だから……私はこの国を離れるわ。メイソン家には戻れないから、この容姿でも目立たないヨーロッパにでも行こうかしら。レイには私から離婚を申し入れるつもり、慰謝料とかタップリ要求したら悪女ってマスコミに書かれるわね」


ティナはふふふっと笑い、「慣れてるから、全然平気よ」と付け足した。


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