紺碧の海 金色の砂漠
「そ、そんな。落ち着いて、話し合うって」

「レイには優しくして貰ったわ。とっても愛してるの。傍に居たら、彼に関係を強要したり、我がまま言ったりすると思うから……もう苦しめたくないの。あんなに苦しそうに、顔を背ける彼を見たくはないのよ」


舞はティナの言葉があまりに切なく、口を開くだけで声が出なかった。

どれほど愛し合っていても、ほんの些細なことからすれ違い、離れてしまうこともある。わかってはいても、目の当たりにするのは辛かった。


ここにミシュアル国王が来たら、個人的事情に舞を巻き込んでしまった、と謝罪するから、舞も素直になって欲しい。ティナは諭すように言う。


「ハネムーンに来たのに、嫌な思いをさせてごめんなさい」


頭を下げるティナに、舞は唇を噛み締めた。



直後――コテージ内の電気が一斉に消えたのだ!


「な、なに? 停電?」

「ブレーカーが落ちたのかも知れないわ」
  

ティナが廊下の突き当たりまで行き、ブレーカーを確認するが上下に動かしても電気が点く気配はない。

外は、一旦止んだはずのスコールが再び凄い勢いで降り始める。


「ねぇ、ティナ。スコールってこんなに続くものなの?」

「い、いいえ……こんな時間まで降り続くなんて」


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