紺碧の海 金色の砂漠
他に言い様がないし、正確なアラビア語で話せるか自信がない。聞き取りはだいぶできるようになったが、話すのはまだまだ危険だ。書くとなると……頭が痛くなった。


『ようこそ、アズウォルドへ。私が国王のレイ・ジョセフ・ウィリアム・アズルです。彼女は私の妻でクリスティーナ。お二人の滞在が両国にとって実り大きいものであることを願っています』


それは驚くほど綺麗なアラビア語だった。

青い瞳と言えばヤイーシュがそうだが、レイ国王はまた違ったブルーである。

柔らかい物腰と口調で、おそらく彼に嫌悪感を覚える人間などいないのではなかろうか。


そう言えば……舞が高校生のころ、隣国のプレイボーイ王子“アジアン・プリンス”の異名をチラホラと耳にした。日本人婚約者が若いのをいいことに、世界中にガールフレンドがいるとかどうとか。


(アルと違って絶対に片手じゃ足りなさそう……)


舞はそんな感想を抱きつつ、『あ、ありがとうございます』。馬鹿の一つ覚えのように、同じ言葉を繰り返しただった。


「はじめまして。アラビア語は話せませんが、日本語は話せます。私の日本語はおかしくないですか?」


なんとクリスティーナは舞に日本語で声をかけてくれた!


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