紺碧の海 金色の砂漠
アメリカ人の彼女はたぶん英語だろう、と思っていたので一瞬返答に詰まり……。


「いえっ! とんでもありません。とっても綺麗な日本語で……」


思わず舞も日本語で返事をしてしまい、ハッと口元を押さえる。

ミシュアル国王は少し頭を抱える素振りをし、ダーウードは舞を睨みつけていた。


(ま、まずい……王室外交でアラビア語以外を喋っちゃった)


どうやって取り繕ったらいいのか必死で考えるが、舞の頭の中は真っ白だ。両国のスタッフもこういう王妃の扱いには慣れてないらしく、みんな黙り込んでいる。

そこをフォローしてくれたのはレイ国王だった。


「それはよかった。妻のために日本語で返事をしてくれて、私からも礼を言います」


今度は流れるような日本語である。このレイ国王は一体何ヶ国語が話せるのだろう。

舞がボーッと見つめていると、ミシュアル国王がつかつかと歩み寄り、


「確かに、あなた方の日本語はとても美しい。アーイシャ、アズウォルド滞在中は日本語の発言を許可する」


レイ国王に向ける妻の熱い視線を遮るように立ち、そう宣言した。


「あ……りがとうございます」


結局、日本語でも同じ言葉しか口にできない舞であった。


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