紺碧の海 金色の砂漠
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――首都トレイドウィンドがあるアズウォルド本島は、日本の岩手県と同じくらいの面積があります。
 

大使館のパンフレットに書いてあった文章を頭の中で思い浮かべる。

空港は海上にあり、王室専用船で本島まで渡るのだという。船の付けられた桟橋まで歩いて行くと、乗船口の横に英語と日本語で注意書きがあった。


“許可された時間帯以外の飛び込みを禁止します。特に船舶の着岸時にはスクリューに巻き込まれる危険があります。係員の制止に従わなかった者は、逮捕されますのでご注意ください”


「あの、クリスティーナ様……この看板は何ですか?」


こんな所で飛び込む人間などいるはずがない。

にも関わらず“許可された時間帯以外”ということは、そういう時間帯がある、ということになる。


舞の質問にクリスティーナは陶器のように繊細な肌を薄っすらと赤らめた。

キラキラ光るブロンドが肩から背中に波打っている。緑の強いヘーゼルの瞳はまさにアンティックドールのようだ。身長は舞より少し低いくらいだが、腰回りが細く、実に女性的な体型をしている。


「ええ、その実は陛下が……飛び込まれたの。それでね、真似をする方が出てしまって……」

「は? レイ国王陛下が……飛び込まれた?」


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