紺碧の海 金色の砂漠
だが二年前、どれほどティナが誘惑しても、レイが落ちることはなかった。初めてティナを抱いたのは、正式に結婚した後だったのだから。もし他の誰かを愛したなら、ティナと離婚するほうが先だろう。

レイは十代の少年のように、自制心を失って女性に飛び掛かるような真似はしない。


(愛されていたのに、こんな愚かなことをしてしまって……。呆れて、今度こそ捨てられてしまうかも知れないわ)


オレンジ色のランタンの灯りは、しだいにゆらゆらと揺らめいた。それは、ティナの涙のせいだった。



「また、泣かせてしまったようだね。長い間、ひとりにして済まない」


ドアが開くと同時に、レイの声が聞こえた。

ティナは慌てて手の平で頬を拭い、顔を上げる。


「いいえ。あの……私たちはいつまでここに?」

「さあ、いつまでかな」

「……?」


レイの言葉の意味がわからず、ティナは首を捻る。


「無線で呼ぶまでコテージには近づくな、と命じてきた。ここでなら、正直に話せるような気がしてね」

「……正直……話って」


胸の奥がざわめき、ティナの涙腺は一気に緩んだ。


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