愛と欲望の螺旋(仮)

私の小さな夢は、漫画の編集者になることだった。


だから漫画の作業工程とか、販売に至るまでを勉強したくて。


同人誌を書き始めた。


元々、絵は得意だったから。


抵抗とかそういうのはなかったし、そこそこ売れてくれて。


逆にビックリしたくらい。


だけど、この就職難の時代。


出版社に就職は至難の業。


ことごとく不採用の通知が来て。


今はフリーターをしながら、細々と同人誌を書いているくらい。


「あの…宝条桜(ほうじょう・さくら)さんですよね?」


中学生くらいの女の子が、うっとりしたような表情を浮かべながら。


うつむく私の顔をのぞき込んだ。

< 4 / 69 >

この作品をシェア

pagetop