愛と欲望の螺旋(仮)

「はい。」


そう言いながら顔を上げた。


「あの…あの…スケブお願いしてもいいですか?」


満面の笑顔で、スケッチブックを私の目の前に差し出した。


「いいですよ。時間は20分くらいいただけますか?」


そう言いながら微笑んで、差し出されたスケッチブックを受け取った。


「キャー!!!ありがとうございます!!」


泣きそうな顔で悲鳴のような声を上げて、スッと右手を差し出した。


「いえ。いつも、ありがとうございます。」


スッと私も右手を出すと、中学生くらいの女の子と握手した。


このスケブっていうのは、スケッチブックの事で。


芸能人でいう所のサインみたいなもので。


好きな作家さんに絵を描いてもらうこと。


多い時は、何十。何百ってくるから。


購入者のみや限定何人ってしいる人もいるみたい。


私も、基本的には購入者のみなんだけど。


この時間は暇だし。


特に周りの喧騒を聞きたくもなかったから。


何かに没頭したいのもあって。


今回は特別に引き受けてしまった。


「宝条さんは、華組(はなぐみ)には入らないんですか?」


スケブを差し出した女の子の後ろから、ヒョコッと顔を出しながら。


おどおどした表情で、もう一人の女の子が私を見た。

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